ほぼほぼひとりごと

クラシックの歌を歌っています。歌のこと猫のこと日常のことぶつぶつ言ってます。

潤平くんのこと

1998年8月30日

初めて参加した門下発表会。

 


そこで歌っていた奇跡のような美声のテノール、それが潤平くんでした。

 


プロでもなく、音大生ですらない。でもその声はその時点ですでにすばらしく、その響きは私の心の琴線に触れまくり、その歌は私の感情を揺さぶりまくり、大きな衝撃を受けたその日からずっとあなたの声が大好きだった。

 


何回目かの発表会ではデュエットを歌いました。椿姫の「パリを離れて」お互い初めてのデュエット。病床のヴィオレッタに駆け寄るアルフレード、潤平くんもまだ演技に慣れていなくて、なんだかお相撲の取り組みみたいにぎこちなくドタドタと駆け寄ってきたりして、その後しばらく笑いのタネになったね。

 

当時私はピアノを弾いていたので、潤平くんのレッスンでもよくピアノを弾かせてもらいました。そのときに近くで声が聞こえるのもとても嬉しく、贅沢な時間でした。


音大卒業後の読売新人演奏会で文化会館のホールが震えるほど響き渡った潤平くんの声。忘れられません。

大学院も無事に終えてその後のイタリア留学。いろいろと大変なこともあったけれど、留学の間も帰国のたびに食事をしたり素晴らしい歌を聞かせてくれたりしたよね。

野田のコメスタでみんなで集まったのも楽しかった。

 


長いスランプに陥ったこともあったね。その頃から、演奏会を聴きにいくと、あとから必ず電話をかけてきてくれて、お礼と感想、ダメ出しを求められたっけ。

どんなときも真摯に誠実に、自分の声や歌と真っ直ぐに向き合いながら、いつも練習を重ねて乗り越えていったよね。


留学を終えてせっかく帰国したのになかなか外で歌おうとしなかったのを、なんとか動かしたくてむりやり歌ってもらったりしたよね。はっぱをかけたような形だったけど、本当は私が潤平くんの歌を聴きたかっただけだったんだ。その時に書いてくれた紹介ブログ、とても嬉しかったのを今でもよく覚えています。

 

http://jumpeiutacciao.blog.fc2.com/blog-entry-17.html?fbclid=IwAR1YdbdU4B0dL_ijxlFemL_ZAhGInZiaKYuqVVz4e9WRd_jRm7QQl0QoTyg_aem_ATVkS1Li7BYNhQbIOyuSi1AWKdE0Au0pmWovLeaNXnz5n1fHe3rEqUH1a-dVNg5h73k

 


はじめて出会ってから25年とすこし、若い頃のキラキラした響きはまったく褪せることなく、それどころか年齢や結婚によってさらに艶も脂も増して、これからももっともっと素敵な声になっていくのを楽しみにしていました。

 


どんなときも真摯に誠実に、あたたかくときにはクールに、妥協せず弛まず、歌に向かう姿はいつも憧れで私の道標でした。

そのあなたがいなくなり、私は途方に暮れています。あなたの存在は私にはあまりに大きすぎました。

 


安らかに、なんて今は言えません。

時々でいいから、空の上からまたあのキラキラした声を聴かせてね。

 


ほんとうにほんとうにありがとう。

 

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